2012年9月

【ライブイベント】 “ポーンを動かす者” 09/22/2012

ブリタニア国民へ

現在ブリタニアの街という街には暴徒があふれ、人々の心はすさみ切っている。イルシェナーの地は正体不明の地殻の変動、ヴァーローレグの浸食、エクソダスの復活、名誉のムーンゲートの損壊という幾重もの苦しみに見舞われ、その景観すらまったく違うものに変わってしまった。さらにテルマーの地もガーゴイルの疫病がはびこり、一部情報筋によるとプリンセス・リスタも一時期その命が危ぶまれたということである。
そしてその一連の事態を何者かが収拾したということは既に聞き及んでいると思うが、彼の正体については今日まで確証は得られていない。
我々はこの者の監視と、暴徒の鎮圧を火急の任務と捉え、王室評議会とロイヤルガードを代表して会議を招集し、広く各街の市民の意見を求めるものである。
ついては来る9月22日土曜日20時より、ブリタニア城において、サー・デュプレ立会いのもと国民会議を招集する。

王室評議会代表
~サー・アークース

ロイヤルガード・キャプテン
~サー・ジョフリー
———————————-

王室評議会代表サー・アークースとロイヤルガード・キャプテン、サー・ジョフリー両名により、ブリタニア城においてサー・デュプレ立会いのもと国民会議が招集されました。

桜民がブリテイン城の一室で待っていると、ジョフリーがやってきました。続いてデュプレが現われ、二人は固い握手をしつつ久々の再会の挨拶を交わしました。そこへ本会議の議長役を務める王室評議会代表アークース、そしてねずみのシェリーも加わり準備が整うといよいよ国民会議が始まりました。

「まずブリタニア各地で勃発している暴徒たちによる放火や襲撃についてだが、ロイヤルガードの収監施設はどこも手いっぱいでもはや限界を迎えようとしている。我々は暴徒をより強硬な手段によって鎮圧すべきであろう。生まれの卑しい者にはパンを与えるだけ無駄である」
アークースの提案に最初に反論したのはジョフリーでした。
「……失礼だが、アークース殿。彼らは元々は飢えて他の街から流れ込んで来たれっきとしたブリタニア市民だ。もちろん、だからといって放火や襲撃が正当化されるわけではないし、街を守るために手段を選ばないと考えていた時期が私にもあった。しかし本当にそうだろうか?」
「他に何があると言うのかね?街の平和を乱す不届き者にはしかるべき制裁を加えるのが当然であろう」

「もちろん私とて最初は彼らに怒り心頭であったことは否定すまい。しかし何が彼らをあそこまで駆り立てるのであろうか?ブリテインの街とブラックソーン城が武装した暴徒らによって占拠された際にはヴァーローレグ産と見られる爆薬の樽が街の主要部に置かれるなどただ飢えに苦しむ人々の所作にしては手が込み過ぎてはいないだろうか?私には何者かが人々を扇動しているように見える」
「なかなか面白いご意見だが、だとしたら一体何がそうさせたと?イルシェナーのあのエクソダスとかいう化け物の所為だとでも言うおつもりか」
デュプレとシェリーも意見を述べました。
「アークース。それがエクソダスの仕業かどうかはわからないが、さらに憂うべきは混乱に乗じて私腹を肥やす者がいることだ。所領を主張し、不当に租税を課す者、盗品を売買する者、帳簿をごまかす者……」
「その通り。あまつさえ王室評議会の真似事をして爵位の売買をする輩まで出て来る始末。我が王室評議会の威信にかけて、責任の所在を明らかにせねばならない」
「まあ待て。君の言い分はもっともだが、日々の暮らしに窮していたのは何も平民だけではない。貴族とてこの時世に糊口をしのぐため、爵位を手放したとて何の不思議があろう」
「ねえ! 今ふと思ったんだけど爵位を買うほどの人たちってきっとお金持ちよね?その人たちに助けてはもらえないのかしら?貴族はその身分だけじゃなくて、ずっと体面を保って行かなくちゃならないわけだから貴族でいるってきっとねずみが思うよりもずっと大変なことだと思うの!」
「君の意見に賛成だよ、シェリー。それに、爵位を購入した人々は皆その街への並々ならぬ愛着があってのこと。どうしてその街を選んだのか、その街を救うために何が必要か、皆さんの率直なご意見を伺ってみようじゃないか」
「そうね!」
「そうだな」

国民が意見しやすいようにジョフリーがまず自分の故郷ジェロームについて語り始めました。
「例えば戦士の街である我がジェロームが誇るのは、何と言ってもあの巨大なピットであろう。見習いの戦士はもちろん、ベテランの戦士も時にピットで汗を流す。戦士たちの高い要求に応えるために、ジェロームの鍛冶屋は皆腕利きなのだよ」
デュプレもそれに答えました。
「確かにジェローム産の武器防具は優れているね。だがしかし汎用性があるとは言い難い。ただ頑丈なだけではなく、魔法使いにも好まれる防具を生産するなどの柔軟性があればジェロームの産業はブリタニアでより広く認知されるだろうと思う」
「魔法使いの街と言うとムーングロウかね?*肩をすくめる*我がジェロームは荒くれ者の街の印象が強いかもしれないが、図書館や劇場もある文化的な面もあるのだよ」
「我が街トリンシックは防壁と堀に囲まれた堅牢な城塞都市だ。街にはパラディン・ギルドが存在し、日々若き騎士たちがその技巧だけではなく、高潔な精神を掲げ、名誉の徳を探求しているのだよ」
「それはおおいにけっこうだが、実戦に勝るものはないよ。食うか食われるかの戦場でそう毎回待ったをかけてもいられまい」
ねずみのシェリーも首都ブリテインがいかにすばらしいかを小さな体で一生懸命説明しました。
「ブリテインだって負けてないわよ! 何と言っても首都だし一番大きい街だし!でもね、ブリテインはちゃんと緑もあって、イースト・サイド・パークみたいな素敵な公園もあるのよ!」
「皆さんご自身の街そして 財源についてももちろんのこと事態の収拾のために何かお知恵を拝借できないだろうか?」
ジョフリーに促され、桜民もそれぞれ意見を出しました。
「仕事を与えるべきだよ」
「公共事業でも乱発するか道路と橋を作ろう」
「扇動に乗ってしまう社会情勢の改善が急務だ」
「張り合うより協力だよね」
「暴徒たちと話し合うべきだ」
「まずは安全」
「魚釣りを必修科目に」
「乞食にも人権を」
様々な意見が飛び交い、デュプレやジョフリーがなるほどと頷きながらそれを聞いているとアークースがおもむろに切り出しました。
「やはり各街がそれぞれの特色を生かして協力しあうことが理想であろう。これらの街を統制するには強いリーダーシップが求められるのは明白。我が王室評議会は満場の一致を持ってサー・デュプレを次期国王に推す」
「その話は辞退させてもらうと言ったはずだ。私がいるべき場所はここではない。名誉の戦いこそ騎士の誉れであり、鎧と剣だけが全てを解決する場所こそ、私が私でいられる場所だ」
「サー・デュプレ。真の王だけが求心力を失ったブリタニアを再び一つにすることができる。現在のブリタニアで国王たりうるのは人々を率いてエクソダスを討伐したあなたを置いて他に誰がいると言うのだ。王の不在はあまつさえ自らをロード・ブラックソーンと名乗り、さも自分がガーゴイルの疫病を治し、名誉のムーンゲートを修復したかのような見えすいたパフォーマンスを行う者までのさばらせている。我が王室評議会はこの不審な男を人心を惑わす不届き者として重要参考人として招致する予定である」
アークースの意見にねずみシェリーは激しく反論しました。
「ちょっと待って!彼はロード・ブラックソーンよ! 間違いなく。そして彼の偉業は彼が一人で成し遂げたことでもないの!皆さんのご協力があってこそできたことなの!」
桜民もシェリーの意見に概ね賛成していたようです。
「悪いことはしてないと思うよ、あの人」
「素性は何であれ助けたのは事実では?」
デュプレを次期国王に推しているアークースは声を荒げました。
「なんですと?あなたはあの怪しい男をまさか本気で担ぎあげようと思ってはいないだろうな?」
ローブの男を怪しいと決めつけるアークースに対し、桜民も反論しました。
「彼は誰もできなかった事を成し遂げた」
「みんなが放置してたなか動いたのはあの人だよね」
「彼が怪しいと見えるなら私にはあなたが卑しく見える」
アークースはますます激昂して声を震わせ、デュプレが止めに入らねばならないほどでした。
「なんだと!シェリー。だとしたらどうだと言うのかね。君はあの明らかに異常な半機械人間の亡霊が墓から蘇って来たとでも言うのかね?まったくどいつもこいつも!」
「アークース。 落ち着くんだ。私は彼のことを完全に信用したわけではないが、彼が誰であれ、彼が人々のためにしたことに目を向けるべきだ。ガーゴイルの疫病を治療する薬を開発し、人々への呼びかけを行ったのも彼だ。名誉のムーンゲートを修復するにあたっても、一体我々に何の打つ手があったというのだ。手立てを持ってウィスプから必要な呪文を手に入れられたのも彼の判断があってこそだ」
「偏見をしないというのは大切だな」
デュプレの意見にジョフリーも賛成のようでした。
アークースはそれでも自論を曲げず、デュプレの説得を試みました。
「サー・デュプレ。あなたは簡単に人を信用しすぎる。いずれ彼は民衆扇動罪のかどで訴えられることになるだろう。彼が自分の功績を誇示するためにガーゴイルの間で疫病を流行らせ、自らの手で名誉のムーンゲートを損壊させたのではないとどうして言いきれよう?」
「私はそうは思わん」
「サー・デュプレ……!お控えください! 何を言いだすのです……!」
デュプレはアークースの意見をきっぱりと退けました。二人のやりとりを見ていたジョフリーがアークースに言いました。
「ロード・アークース。お気持ちはお察しするが、今は誰かを裁くことよりもいかにしてブリタニアに平安をもたらすかを考えるべきだ。私はロイヤル・ガードとして自らの力の限界を知った。人々を導くのは力ではない。徳、そしてやはり類まれな資質を持った指導者が必要だ。一人の王、真の王のもとに我々はひとつになるべきだ」

シェリーはローブの男の無実をさらに主張しました。
「ねえ! みんな信じられないかも知れないけど聞いて!彼のチェス・ボードを見た?かの王の刻印が刻まれているのよ?!なぜ彼がそれを持っていたのかしら?彼はかの王の親友だった……! 間違いないわ。彼こそはロード・ブラックソーン!」
「王は必要だが、誰が王になるかはもっと重要だ!ばかな……!かってブリタニアをその独善的な思想によって混乱に陥れたあの男を、あなた方はかつぎ上げようと言うのか?」
「もちろん彼自身が何を望んでいるのかはもとより、人々の意見も聞かなくてはならない。皆さんのご意見を拝聴しようではないか。さあ皆さんいかにお考えか?」

デュプレを次期国王にというアークースの意見に対する桜民の反応もまたそれぞれでした。
「ネズミに賛同w」
「そこまで王様が必要とも思わんが。かの王が去った後の長期政権は王不在だが安定していた」
「その頃のブラックソーンが本物だったか確証がないからな」
「最近現れたブラックソンは良い人だ」
「機械っぽくはなかったな」
「どっかに閉じ込められてたんでしょ?」

アークースはシェリーの言葉を信じている桜民に対し憤慨して大声を上げました。
「なんだと?あなたはあの半機械人間が偽物だとでも?今のが本物だと?」

そのとき会議室扉が開き、黒いローブを着たロード・ブラックソーンが入室してきました。
「彼のことは彼自身から直接聞こうじゃないか」
「お待たせしてしまってすまなかった。どうぞ、議論を続けてくれ」
「急に呼び出してしまってすまなかったね。君に関しては私よりもむしろ皆さんが聞きたいこともあろう。答えられる範囲で答えてくれ」
「うむ」
どうやらデュプレが、彼をここへ呼んでいたようでした。デュプレが彼を好意的に迎え入れたのをみたアークースは叫びました。
「認めん!わしは認めんぞ!偽物に決まっておろう。まさかあの機械人間が偽物であなたが本物とでも言いだすのではあるまいな? はっはっはっはっ!何をたわけたことを!偽善者ぶってもわしの目はごまかせん!」
「本物?私は私だ。まぎれもなく。もし貴方がエクソダスによって作られたもう一人の私のことを言っているのならば……。エクソダスは私を元に私から高貴さと慈悲の心を抜いてあれを作ったと言っていた。しかし、不完全ではあるがあれもまた私だったと言っておこう」
「ふん。もっともらしいことを言いおって。言い逃れはできん。わしの目はごまかされんぞ」
アークースの非礼にも構わず、ロード・ブラックソーンは落ち着いた態度で席に着きました。
「今日は街の平定について協議するとうかがっていたのだが…?」
桜民も彼の登場に、少し驚いたようでした。
「いままでどこにいたのですか?」
「王になるなんて、いまとなっては貧乏クジを引くようなもの‥」

次に現われたのはまたもや意外な人物でした。テルマーの女王ザーが、供も連れずたった一人でやってきたのでした。
「ロード・ブラックソーン!!ロード・ブラックソーンはいらっしゃいませんか……!」
「ザー女王」
「これはサー・ジョフリー! そしてサー・デュプレ! シェリー!そちらにいらっしゃる方は王室評議会のアークース殿とお見受けします。初にお目にかかります。テルマーより参りましたザーにございます。あいにく今日はあまり時間がないのです。ただ、ただ、一言お礼を申し上げたく、こうして供の者もつけずに馳せ参じました」
ザーは高貴な身分にも関わらず、その場で深く全員に礼をしました。
そして目の前にいるブラックソーンに、感謝の言葉を述べたのでした。
「ロード・ブラックソーン!あなた様こそ真の王にございます。我がテルマーの民の多くがあの疫病のために犠牲になりました。そしてあろうことか我が娘リスタも病を得て、あなた様の開発した治療薬によって一命をとりとめました。これもすべて私の不徳のいたすところでございます……!どうぞ、どうぞ私がここへ来たことはご内密に……!けれどもし、あなた様が王としてこのブリタニアに君臨される時が参りましたら、その時には、私はふたたびこのブリタニアの地にリスタを伴って来るつもりです。テルマーの民だけでなく、 ヴァーローレグの民もムーンゲートの修復に沸いております。あなた様が王としてこのブリタニアに君臨されることは、我が民をもひとつにする可能性すら秘めているのです。そして我がガーゴイル族とブリタニアはその時こそ、真の友情で結ばれるでしょう!」

「サー・デュプレ、サー・ジョフリー、ロード・アークース、そしてシェリー!しばしのお別れでございます。近い将来、必ずや喜ばしい歴史の1ページが刻まれることを祈っております……!」
「リスタ殿の一日も早い回復をお祈りする」
「ごきげんよう!」
突然のザーの来訪に全員は驚きましたが、思いがけずテルマー側の意向がはっきりしたことは大きな収穫でした。

アークースは頭を振りながら、なおもブラックソーンを糾弾しつづけました。
「ばかな……。我が王室評議会は引き続きこの男の監視を続ける。我がブリタニアと王室評議会はあくまでも民主的な統治を目指している。独裁者の思うままにさせるわけには行くまい」
ブラックソーンは立ち上がり、静かにアークースに語りかけました。
「アークース殿。私たちはポーンだ。私も含めて。ポーンのないチェスがあろうか?」

アークースは黙っていたのでデュプレがその問に答えました。
「君の言う通りだよ。ロード・ブラックソーン。けれどキングのないチェスもまたない。我々一人ひとりが自覚を持って新しいブリタニアを作って行かなくてはならない。クィーンも必要かも知れんがね」
デュプレはブラックソーンにウィンクをしました。それはブラックソーンの意見に対する賛成の意でした。
デュプレに続いてジョフリーも答えました。
「王室評議会だけではなく、我々ロイヤル・ガードやすべての民衆が、今後はあなたの一挙手一投足に注目することだろう。あなたが王に値すれば民意があなたを即位させるだろう。しかし統治とは決して王が一人で成すものではない。民意によってキングを動かすのは我々ポーンである」
ジョフリーはそれだけ言うと、会議は終了したとばかりに部屋を去っていきました。
「私も失礼するよ!喉が渇いたんでね。では諸君! 近いうちにまた会おう!」
デュプレもそのすぐ後に部屋を去って行きました。
次に彼に会うのはいつでしょうか?
ねずみのシェリーはブラックソーンに語りかけました。
「ねえ! ブラックソーン!あなたに見せたいものがあるの……!きっとびっくりするわよ?あなたのお家よ!あなたは家に帰るのよ!じゃあね、皆さん!わたしたちもこれで失礼するわ!」
「いずれまた会おう」
二人はゲートを開き、去っていきました。

一人会議室に残されたアークースは憤慨していました。彼のデュプレを次期国王にという目論見はみごとに外れてしまったのでしたから。
「民意だと?わしは認めん。認めんぞ!ばかな!我が王室評議会は引き続きあの男の監視を続ける!民衆を扇動しおって!私はこれで失礼する、また機会があればお会いしよう」
アークースはそう言い放つと、怒りながら会議室を出て行きました。

—————————————————-
国民会議に参加してくださった皆さま、ありがとうございました。
今後のブリタニアの動きにさらに注目をお願いたします!

【ライブイベント】 “The Awakening(覚醒)第七章” 09/09/2012

ドラゴンウルフ村を訪ねたデュプレ卿とねずみのシェリーは例のガーゴイル老廃病の治療をしていた謎のヒーラーがブラックソーン卿だと知りました。思いがけない人物と再会したデュプレ卿は、ブラックソーン卿の言葉の真実を確かめるためフルッカへと向かいました。一方シェリーはブラックソーン卿が申し出た名誉ゲートの修復を成し遂げるべく、桜民の協力を募ったのでした。

桜民がドラゴンウルフ村に集まっていると、シェリーが走ってきました。
「皆さん、こんばんは!変わりはないかしら?私は元気よ!今日サー・デュプレは事情があってこちらに来られないのだけどサー・デュプレからその……、彼を助けてあげてほしいと言われているの。そう、あのヒーラーのことよ」
シェリーの説明によると、デュプレ卿はブラックソーン卿の語った夢物語のような出来事を信じきっているわけではないが、今はソーサリアを救う為に、献身的にガーゴイルを治療してくれた卿に賭けてみることにしたということでした。
「ええ、そうよ!都合のいいお願いかも知れないけれど、彼が誰であれ、もし皆さんがサー・デュプレの名のもとに彼に協力しようと思ってくれるならば、どうかお願い!彼にサー・デュプレの元から来たと伝えてちょうだい!そして彼の話を聞いてあげてほしいの!協力してくれるかしら?」

シェリーの情報網によれば、ブラックソーン卿はガーゴイルの病気が癒えた後もときどき彼らの様子を見にドラゴンウルフ村を訪れているとのことでした。桜民が手分けしてブラックソーン卿を探していると村の桟橋のところに黒いローブをきた人物が立っているのを見つけました。

「シェリー。おやおや。古き友よ。まだ君は私を警戒しているのかい?古き友は大歓迎だが、人生において新しい知己を得ることはさらに重要だ。こんばんは、シェリー、そして皆さん」
「こんばんは。前もって連絡しておこうと思ったのだけど早いほうがいいと思ったの!お邪魔じゃなければいいのだけど」
「そんなことはないさ。ちょうど一段落したところだ」

その昔シャドーロードそしてエクソダスと手を組みブリタニアを襲ったブラックソーン卿、そのことを知っている桜民も少なくありません。シェリーはそんな皆の心を知っているのか、説明するかのように語りだしました。
「あなたは世間一般で言われているような人物ではないし、あなたがサー・デュプレと私に語った不思議な物語を信じるならば、私たちが知るあなたはあなたではなかった!」
それに対しブラックソーン卿は次のように答えたのでした。
「そうだね、シェリー。だが私は私だ。まぎれもなく。もともと破片世界のひとつひとつにはタイム・ロードの言うところの真の世界の複製が存在していて今ここにいる我々も複製のひとつにしか過ぎないと言うならばエクソダスが作った私の複製もまた、不完全ではあっても私であったと言うべきだろう。だがそんなことはどうでもいいんだ。もはや王でもなく、王の側近ですらない、何の力も持たない今の私にできることは目の前で苦しんでいる者一人ひとりに救いの手を差し伸べることくらいだ。例え相手が複製であろうとなかろうと、君だってそうするだろう?」

タイムロードの「砕け散った脆弱な破片世界をひとつにし、宇宙とふたたび共鳴させて守る計画」に反対したブラックソーン卿はかの王やデュプレ卿、ニスタルらと対立していました。 シェリーは当時のかの王とブラックソーン卿のやりとりを思い出していました。タイムロードの計画通りに破片世界をひとつにすれば真の世界にオリジナルを持たない者はただ消滅するだけだったのです。大きな目的のために犠牲を伴うことはやむを得ないとかの王は考えていたのでした。ブラックソーン卿はその考えに反対してかの王と袂を別ったのでした。そしてあの悲劇が起こったのでした……。
しかしそれも昔話だとでも言うように、ブラックソーン卿は続けました。
「けれど今は互いの主義主張はともかく約束を果たしてくれたサー・デュプレに感謝しなくてはならないだろう。彼は私がムーンゲートの修復を申し出た時にはかなり懐疑的だったが、さりとて他に打つべき手段も見つからなかったと見える」

ブラックソーン卿の指摘は的を得ていましたが、それだけではないとシェリーは続けました。朽ちた日誌に書かれていた通り、ブラックソーン卿がエクソダスを封印したときに使用したと思われる合成ムーンストーン、そして優れたメイジであるブラックソーン卿自身が必要だと判断したデュプレは、桜民をブラックソーンのところへ送ったのだと訴えたのでした。そして付け加えるように言いました。
「 ロード・ブラックソーン。サー・デュプレは何よりもあなたがガーゴイルたちのために成し遂げたことに深く感銘を受けておいでなのです。だからこそあなたを信頼し、こうして兵を差し向けてくださったのです。彼らは仰せのままにあなたに従い、あなたのために戦うでしょう。彼らはあなたの号令を待っています。ご指示を!」
ほんの少しの沈黙の後、ブラックソーン卿は言いました。
「サー・デュプレに私からの感謝を伝えてくれ。そして今日ここに集ってくださった皆さんにもあらためてお礼を申し上げる。実は……。うまく行くかどうかの保証はないのだが、千にひとつの可能性があるならば私は名誉のムーンゲートの修復を試みたいと考えている」
そして卿は、ムーンゲート修復のために3つの要素が揃う必要があると言いました。その3つとはメイジ、秘薬もしくはアーティファクトこれらはつまりブラツクソーン卿と合成ムーンストーンのことでした。そしてもうひとつ必要なものとは古代イルシェナー民が固定ムーンゲートのネットワークを構築する為に操った呪文でした。
「ロード・ブラックソーン!イルシェナーの先住民であるイルシェンやアンスキタスには謎が多いわ。当時を伝える文献もほとんど存在しないはず……。そんな呪文を知っている者がいるかしら?たとえ知っている者がいたとしても、比較的最近のブリタニアン・スペルですらあまりに強大なパワーを持つものは宮廷魔術師たちの手によって封印されたものもあったはずよ!」
シェリーの疑問に対し、ブラックソーン卿はこう答えました。
「シェリー。君の言う通りだ。れを知り得るのは人ではなく、かってアルマゲドンの呪文を我々にもたらしたウィスプなのだよ」
「なんですって!?」
「私はこれからウィスプダンジョンに出向いてウィスプを呼び出す。呼び出しには危険が伴う場合もある。そして君も知っていると思うが、ウィスプとは取引をしなくてはならない。彼らはソーサリアのあらゆる情報のブローカーだからだ。どのような情報を要求されるのかは取引するまでわからない」
謎めいたウィスプと取引するため、シェリーは桜民にブラックソーン卿に付いていくように促しました。そして一行はブラックソーン卿とともにイルシェナーのウィスプ・ダンジョンへ向かったのでした。

ウィスプ・ダンジョンへ着くとwisp undeadというモンスター達があらわれつぎつぎと一行に襲い掛かってきました。桜民が戦線を切り開いていき、ブラックソーン卿はダンジョンの奥にある祭壇へとゆっくりと進んで行きました。

祭壇に到着すると、ブラックソーン卿はウィスプの召還の呪文を唱えはじめました。
「In Kal Xorinia……」
すると突然、雷とともに二体のWisp guardianがあらわれました!

桜民が暴れるそれらを討伐すると祭壇の前に真っ白に光り輝く一体のWispが姿をあらわしました。いよいよウィスプとの取引の開始です。

「またしても、お前はこの平面界において素朴な祈りの魔力を発動しようと試みるのか。ではお前はいかなる名前で呼びかけられんと欲するか?」
「Blackthorn」
「了解した、”Blackthorn”。お前は、以前に私が論じた内容を記憶しているか?」
「Yes」
「なれば、冗長な反復は避けよう。お前がブリタニアで認識するところの”ウィスプ”とは、ゾーリニアに存在する生命の投影にすぎない。しかしながら、これら”ウィスプ”は脆弱な影になってしまった。けれども、お前の平面界は最も安定した形態を保っている。異なる平面界間の情報伝達媒体として、ゾーリニアは機能している。お前は情報交換を望むか?」
「Yes」
「よろしい。お前が持っている老廃病の治療薬に関する情報を差し出すがよい。さすればゾーリニアはお前に情報を供給するだろう」
「ああ。いいとも。ちょっと待ってくれ。この薬は243通りの調合方法が存在する。書き留めて渡すこととしよう」
ウィスプとブラックソーン卿の体がきらきらと輝きました。
「心配にはおよばぬ、 “Blackthorn”。お前が取引に応じた瞬間に、お前の正当で緻密な情報は、ただちにゾーリニアに供給された。信じがたいことだが、この物質に付随して、いくつかのソーサリアの歴史が今、完全に塗り替えられた。いや、覆されたと言った方が適切であろう。……では、”Blackthorn”。お前の望む情報は何か?」
「イルシェナーの先住民であるイルシェンたちが固定ムーンゲートのネットワークを構築するために使用した呪文を」
「了解した、”Blackthorn”」
もう一度二人の体がきらきらと輝き、その瞬間ブラックソーン卿はたしかな手ごたえを感じたようでした。

「今、お前はそれを入手した」
「ああ。そのようだ」
「ゾーリニアはお前の流儀を尊重する。しかし呪文の取引には慎重にならざるを得ない。むやみにこれを諳んじてはならない。さもなくば”Zog”のように破滅への道をすすむであろう。お前が重要な情報を得たときは再び私と交信するがいい。さようなら、”Blackthorn”」
こうして無事ウィスプからムーンゲート修復に必要な呪文を手に入れることに成功しました。

「すべての条件は揃った。名誉のムーンゲートへ向う」
ブラックソーン卿はムーンゲートを開き、全員をシェリーが待つ名誉ムーンゲートへと連れて行きました。
「みんな! お帰りなさい! ……呪文は手に入ったのかしら?」
「ああ」ブラックソーン卿はシェリーに報告しました。
「それはよかったわ!」
「これからムーンゲートの修復作業に入る。修復の際に予期しない出来事が発生する可能性もある。周囲に目を配っておいてほしい。では、始めよう」

全員が見守る中、ブラックソーン卿は壊れたムーンゲートに向かって呪文を紡ぎはじめました。
「Ex Vas Grav Lor , Vas Rel Por Kal Uus An Tym , An Grav Quas Jux Kal Vas Lor ……」
卿が呪文を一節唱えるごとに様々なタイプのモンスターがゲートから現れました。呪文は確かにムーンゲートに影響を及ぼしていました。
「 In Vas Rel Grav Ex !」
ブラックソーン卿が最後の呪文を唱えた瞬間、名誉の聖杯をかたどって並べられたタイルの上を金色と紫色の炎が走り凄まじいほどの神秘的なエネルギーが流れ出しました。

名誉の聖杯の上にエネルギーの走った跡を示す残り火のように紫の炎が一筋輝いた時、名誉のムーンゲートは元通りの青いゲートへと変化していました。
「どうやら効果があったようだ」
観衆から歓声が沸き起こり、桜民はブラックソーン卿にお礼の言葉をかけました。
ブラックソーン卿は皆に向かって言いました。
「シェリー。皆さん。ゲートは修復されたようだ。けれどまだエクソダスが残した爪跡は完全には癒えていない。修復しなくてはならないのは、ブリタニアの街であり、ソーサリアの世界である。私たちはポーンであり、一人ひとりの力は小さいが力を合わせてガーゴイルたちを救ったようにまた必ずや近いうちに力をひとつにしこの世界を修復しようではないか」

力強い言葉に、皆頷いていました。
「そうね!ええそうね!」シェリーも小さな拳を握り締め、街に平和が戻る事を祈っていました。
こうして名誉ムーンゲートは元に戻り、ブラックソーン卿は去っていきました。

Comments are closed.